「海さん、あとでプレセアさんのところへ行きませんか?」
「プレセアのところ?」
「はい、海さんにわたくしの风邪がうつらぬよう、薬をもらいに」
「そうね…うつったら大変だものね。ついでに光の分ももらっておこうかしら」
「そうですわね、セフィーロでも风邪が流行っているみたいですから」
本当に不思议迷惑な世界だと思う。セフィーロは。
意志が绝対の世界なら、风邪ぐらい意志の力で治せてもいいじゃないか。
全く…。
「二人とも待たせたな」
仕事を终えたフェリオを部屋で待っていたのは、风…だけ。
「あれ、ウミは? 一绪にいたんじゃなかったのか」
「ええ、途中までは」
「途中まで?」
「わたくしが起きた时にはすでにいませんでしたわ」
「起きたときって、フウ、そんなに具合が悪いのか?」
风は小さく首を左右に振る。
「海さんがわたくしの体调を気遣って下さって、フェリオが戻るまで少し横になったほうがいいと」
「そうだったのか。それでウミはどこへ行ったんだ?」
「わたくしもそこまでは…。もしかしてアスコットさんやカルディナさんたちのところへ行かれたかもしれません」
「そっか。せっかく二人に旨いもんでも喰わせてやろうかと思ってたのに、いないのなら仕方がない」
「海さん、クレフさんのことをとても心配されてました…」
「…だろうな」
「口で言わなくとも…海さんは正直ですから」
フェリオは笑みを浮かべてうなずいた。
薬…。白い布で包まれた白い粉。これはクレフが作ったとプレセアが言っていた。手の中には自分と光の分とで二つ。
「……」
クレフもこの薬を饮んで休んでいるだろうか。プレセアは何も言わなかったから、大丈夫だということだろうか。
さっきから动物园にいる北极熊のように、ある场所の前で行ったり来たりしている。行くべきか、やはり行かないべきか。こういう时こそ优柔不断とは迷惑なものである。
行って迷惑になるなら行かない方がいいだろうし、力になれるなら行った方がいい…。今の自分には、きっと力になれる能力も知恵も、ない。
「……」
海には一つのトラウマがある。あの戦いのとき、クレフは倒れるまでの魔法力を使い、自分と仲间を魔の手から救ってくれた。そのとき倒れたクレフを看病しようと部屋へ向かったが、大丈夫だからと言われ、なかば强制的に部屋から追い出されてしまった。
あのときのクレフは决して自分が迷惑だから追い出したわけではない、彼なりの気遣いがあったと后々気付いたが、やはりこういう似た场面に立たされるとあのとき受けたクレフの言叶が胸に响いてくる。
これから行って、また大丈夫だからと言われたら……正直ショックだ。
でも…。
「风邪の前兆だと思うんだ。今朝头痛がするとおっしゃったから、今日はゆっくり休んで下さいと伝えたんだ」
「そうだったのですか」
「ま、导师のことだから大人しく寝ていることはなさそうだけど、俺たちなんかより知识のあるお方だから、あとはご本人に任せている」
「…海さん、今顷クレフさんのところへ行っているのでしょうか」
「そうじゃないか。ウミは心配になって放っておく型じゃないだろう?」
もちろん、というように风がうなずく。
「海さんは优しい方ですから」