気になる次の構想は!?
――まだ決まってない部分もあると思うのですが、今後の展開はどんなふうにお考えなのでしょうか。ファンだと、例えば「天海蘭太郎が主人公の『V2』が見たい」という声もあるかと思うのですが。
寺澤:確かに、「天海の前回のコロシアイはどういうのだったの?」とか、小説でも漫画でもいいから出してほしいという声は聞こえてきてますね。
――ちょうどアニメの『絶望編』みたいな作品を望む声もあります。
寺澤:その気になったら書いてくれるんじゃないですかね。
――期待してます!次の質問なのですが、『ダンガンロンパ』はユーザーの予想を裏切る展開を仕掛けている印象があります。ファンとしては「今度もどこかで予想を裏切ることを仕掛けてくるんじゃないか」と構えてしまうところもあるのですが、その状況下でも予想を超える展開で心を動かすために意識していることはあるのでしょうか
小高:軸はミステリーなので、想像通りのものにしちゃったらだめだというのは絶対的にあります。かといって予想を裏切りたいばかりに賛も否もない、感動がなにもなくなっちゃってもいけない。そこはもう両立するようになんとかするしかないですよね。
それと、普通のゲームでは開発期間が長くても最初に考えたものが基本となってできていくものなんですけど、『ダンガンロンパ』はいい意味でも悪い意味でも思いつきをけっこう入れていくんです。例えば6章とかね。
佐々木:そうですね。あの辺は本当に要素としてはプロット上には何も書いていなかったものが多かったりして。例えば学校が崩壊するといったところですね。シナリオを描き始めてから(小高さんが)「壊したほうがいままでと違うと思う」と言い出して、「そうですね」と。
小高:そういう意味で、長い制作期間をフルにアイデア出しにも使いながら作ることができる。いい意味で言えばね。悪い意味で言うと、コストの計算ができない(笑)。シナリオを書きながらでも、出来を見ながらでも予想を裏切る形にしたいなということは常に考えていましたね。『V3』の5章のトリックとかもそうでした。
佐々木:あれはテーマだけ最初渡されて……。
佐々木:トリックのテーマとして、「加害者と被害者が協力するからこそ成り立つトリックを考えて」と言われて、そこからほかの3人のプランナーと集まって一か月くらいアイデア出しを重ねて、作って見せましたね。
小高:だから最初は全然違うトリックだったもんね。
佐々木:最初は弓矢を二人で引くというトリックでした。片手同士しか使えないケガを負った状態で、それぞれが弦と握の部分をもって、加害者側から引かれて刺さるという。
小高:あれはマップ的にもしんどいし、5章としてはちょっと物足りないかもしれないという結論になりました。ドラマ的にも少し足りないということで、もう一回揉み直した結果、ああいう風になったという感じですね。
佐々木:エグイサルも最初はあの用途は考えていなくって、たまたまうまく使えてよかったなって。
小高:5章で出てこなかったら、本当になんだったんだあれは!?みたいになってたね。ただのモブというか、意味がわからない機械(笑)。だからまあ自分たちでも作りながらも、これがベストなのかということは考えながらやってますね。
寺澤:でもそれはシリーズを積み重ねて成功した経験があるからこそできることであって、『1』の時は小高もいろんなところで妥協してくれていたし、スケジュールとかコストを考えて、バランスを見ながら相当作ってくれていましたね。
小高:そうですね。ただ、シリーズものならではで、『1』はある程度妥協してもいけるんですよ。妥協しても大丈夫なアイデアを考えられるんですよね。その時にはアイデアがまだたくさんあるから。それをどんどん食いつぶしていくと、最後のほうはなくなってくるんですよね。だから「もうこのパターンしかない!」ってやつになっちゃって、そうなると「コストもクソもあるか!」みたいになる。
寺澤:過去にやったことが足かせになるんだよね。同じことはできないから。
小高:だからもう「コストを見つつの新しいものは無理だ!」ってなっちゃって、選択肢がどんどん限られてきちゃう。そういう意味ではだんだん『1』『2』『V3』といくごとにコストがかかるネタを選ぶようになっちゃいました。そういう意味では『1』は偉大だなと思ったんですよね。ああいうソリッドな感じで、ネタも大きく広げないけどグサッといく鋭い感じのものもあったので。
――今あえて『1』を作り直すとしたら、追加したい要素はありますか?
小高:そう思ったものは『2』やそれ以降の作品に入れていますね。強いて言うなら、もう少し犯人をわかりにくくしたいかな。『1』の時はめっちゃ簡単にわかっちゃうんで。簡単にわかるって指摘も多かったですね。だから『2』『V3』はわからないように作っています。
――確かに今回初見でわかるものは一個もありませんでした。
小高:真宮寺(是清)くらいかな、ちょっとわかりやすいのは。あれも2章でマジックショーを舞台にしていて夢野(秘密子)が犯人じゃなかったというのを一つはさんでいるので、オカルトを舞台にしていても真宮寺が犯人じゃないと思ってくれるんじゃないかという狙いがあったので、あれはあれでアリにしました。
――夢野は完全に死ぬ枠だと思っていました。過去作でもああいうかわいらしいキャラクターはそんなに生き残っていなかったと思うのですが、あえて生き残らせた意図はあるんですか?
小高:結局、『2』の九頭龍(冬彦)もそうなんですけど、仲間の死を乗り越えて成長するぞ!という気持ちをもったのに殺すのはちょっと……。それも予想を裏切ることにはなるんだろうけど、そんな形で裏切りたくはないなと思いましたね。成長しきって死ぬんだったらいいんですけど、成長するぞ!という矢先に死ぬのは少し露悪的すぎるかなという気がしたので。だから『V3』も3章までやってもらったら、九頭龍の例もあるし夢野も生き残るぞと思ってもらえたんじゃないですかね。
寺澤:いやでもこんなこと言っていますけど、次の作品があったらそのやり方で殺すと思いますよ(笑)。
小高:かもしれない……(笑)。
――次に主人公について、ネタバレなので最原終一が主人公ということにしてお伺いしたいのですが、これまでの主人公はわりかし感情移入しやすいキャラクターという印象があります。最原は過去2作とは明確に差別化されている印象があるのですが、生み出す際にどのようなことを意識されましたか?
小高:"成長"ですかね。成長する主人公というのを意識しています。『1』の苗木は登場した時は気弱だけどかわいいという特徴があるので、なんか最初からかわいいんですよね。でも最原はもっと自分に自信がなくて、プレーヤーが自分と同率か、ちょっと心配するキャラクターにしたかったんですね。キャラクターを考えるときには、赤松(楓)からバトンタッチされるとか、百田(解斗)と仲良くなるけど思いを託されるという展開を考えていたので、だったらどんどん成長するという風にしないといけないなと。最原で一番意識したのはそこですね。担当した林原(めぐみ)さんも相当それは意識してくれていて、1章とかめちゃめちゃ弱いよね?
佐々木:そうですね。最初と最後で一番口調が変わったキャラですよね。
小高:1章の時点で聞いたときは、スタッフのあいだでも「こんなに弱くて大丈夫か?」という声もあったんですけど、6章までいくと「完全に男になってる!」と印象を変えてくれました。その割には「ブレインドライブ」では頭の中でコールガールをひいていったりとかして、ド変態な一面もあったり。何を考えているんだコイツの頭は?っていう感じですよね。
――キャラクターを作る際にはどんな風にして決まっていくのでしょうか。
小高:基本はプロットが出てきたあたりで、キャラクターの外見や特徴など思いついたものをできるだけ書いて、それを小松崎に渡して、上がってきたデザインをもとにまた話してという感じですね。だいたい6・7稿までいきます。スムーズにいって2・3稿。話し合いにもそんなに人を入れていなくて4人くらいで決めていますね。
寺澤:『1』の時はけっこうみんなで話し合ったんですけど、シリーズを重ねてきて、いろんな人の意見が入るよりも、作りたい人のイメージがちゃんと形になったほうがいいだろうと。オレなんか最終稿しか見てないですからね、全然見せてくれないから(笑)。
小高:そこはどのタイミングで見せたらいいかわからなかったというのと、全部がそろって出てきたときに、そのバランスを見てほしかったというのもあるんですよね。
寺澤:そのへんのバランスの話は、『1』でも相当やってきたところですね。
――今回一番修正が多かったのはどのキャラクターなんですか?
小高:王馬(小吉)かな。あと天海もけっこう時間がかかった気がする。でも全体的に今回は『2』よりもスムーズにできたかな。
――『2』の時は苦労されたんですか?
小高:『1』の成功が前提にあって、大神(さくら)みたいなキャラクターを入れてほしいという無茶な要望がきたりしたので。あんなものはできないんですよね。ああいう"発明"って感じのキャラデザが一回できると『2』のときもほしくなるんですよ。それはすごい難しくて、一応枠はとっておいたんだけど、どうしてもできないし、やっても「またあそこを狙った感じ?」というのが透けて見えるのでいっそあきらめようと。
『V3』ではそういうところは最初から目指していませんでした。星(竜馬)もおもしろ枠として入れているわけじゃなくて、かわいらしいけどハードボイルドなキャラクターとして作っています。一方で白銀とか天海みたいな特徴がないけど美形みたいなキャラはかえって時間がかかったりしますね。足し算をしたくなっちゃうので。特にいろんな人の声が入ると足し算されたキャラデザになりがちで、そこも会議にあまり人を入れない理由ではあります。僕はあまりそういう足し算されたキャラデザが好きではないので。だから思い切って最原なんかは帽子をかぶって根暗、みたいなね。
佐々木:最原はけっこう修正がありましたよね。何回やっても日向とか苗木になっちゃうというのがあって、その差別化は意識していた気がします。