奥さんが,子供(こども)を抱(だ)いて,表(おもて)でひなたぼっこをしていますと,道(みち)を通る(とおる)人が,子供を指差し(ゆびさし), 「ほんとに,この子(こ)は,東西南(とうざいなん)じゃなあ。」 といって通ってゆきました。 奥さんは,誉(ほ)められたと思い,嬉(うれ)しそうに家(いえ)に入ると,ご亭主(ていしゅ)に言いました。 「のうのう,おまえさん。どこの人か知らないが,この子のことを,東西南じゃと,とても誉めていかれましたぞ。」 というと,ご亭主, 「風呂(ふろ)にでも入れて,表へつれてでな。東西南とは,北(きた)ないということだぞ。」