冬の朝
それからそれがどうなつたのか……
それは僕には分らなかつた
とにかく朝霧罩めた飛行場から
機影はもう永遠に消え去つてゐた。
あとには残酷な砂礫だの、雑草だの
頬を裂るやうな寒さが残つた。
――こんな残酷な空寞たる朝にも猶
人は人に笑顔を以て対さねばならないとは
なんとも情ないことに思はれるのだつたが
それなのに其処でもまた
笑ひを沢山湛へた者ほど
優越を感じてゐるのであつた。
陽は霧に光り、草葉の霜は解け、
遠くの民家に鶏は鳴いたが、
霧も光も霜も鶏も
みんな人々の心には沁まず、
人々は家に帰つて食卓についた。
(飛行機に残つたのは僕、
バットの空箱を蹴つてみる)
【冬之朝】中原中也
金 枫 译
那以后它怎样了呢……
我并不知晓
总之机影已从朝雾笼罩的飞机场
永远地消失掉了。
而后只剩下严酷的沙砾、杂草
和几将撕裂脸颊的寒冷。
——犹是此般残忍而空寂的早晨
人不得不笑脸迎人
却被认为实在无情
即便那样此处仍有
很多蓄满笑意的人
油然而生优越之感。
朝阳在雾里闪光,将草叶解霜,
远处的民家中鸡儿啼鸣,
然而这雾这光这霜这鸡
无一物沁入人心,
人们正归家回到饭桌前。
(被留在飞机场的我
踢了踢“球棒”①的空盒)
①原文「バット」指「ゴールデンバット」,即“GOLDEN BAT”。太宰治所喜欢的一种香烟的牌子。